ここに日があり得る構え、照らされる当のものを知る人の足踏みだ。 時刻の潰されたこの場で朝が怖いのは片目ずつしか眠れないからだった。夢は全て一つの街の中でのお話だ。死ぬ鳥は火を見た。追憶する。 --- いつの間にか家にいた。まだ死んでいない。科学…

昔書いたもの 誰かが指先に引っ掛けて遊んでた透明の風船を、針でつついて穴をあけた。割る直前まで息を殺したおもちゃたちがいなくなるとみんなそれぞれの持ち場に向かって無秩序な隊列を組み始め、ふわふわ頭の上の空間が全部彼らだったことを教えてくれる…

Astra

押し込めた景色は青黒く擦れたような質感が見ているだけで指先に伝わった。形の組み替えがうまくいかなくて、悲しくて涙が出る気分を象りながら繊維みたいに絡まった結晶を見ているともっと悲しくなった。真っ直ぐに歩くだけで迷子になれる人は生まれつき魂…

こわいゲームがだいきらい

ぶくぶくする目が排水口に流れてしまいます。石けん水を飲みすぎたことへの、ひとつの罰になっている。手足の先を少し削られてできた手ざわりはこの家の形を曲げてしまうのでお風呂場から台所まで山を登ります。冷蔵庫の牛乳で目を洗うには、そこからふたつ…

あなたがそこに立って見ている、手のひら。

寒い冬の一週間を春の半分くらいの長さだと思って過ごす間に近づく春が本当の春よりまだ少し冷たいのはきっと生まれて間もないからでしょう。空気に溺れる人間を考えてみて水の中の魚は笑っています、凍った湖の中に魚が溺れていると氷の中では魚は溺れてし…

遠くで踊ったままの猫(昔、宇宙に行きたかったから)

割り箸で作った猫のお墓のことをみんな忘れていたから冗談が本当になっても仕方がない。猫又は夜に寝ない子を食べに来るけれど昼間は飼い猫のふりをして家の中にいることにみーちゃんっていう名前がついている。みーちゃんは「寝ていない子どもを食い殺す」…